ベジエ市より北東に12km、地中海沿岸のアベイアン村に1620年から続く名門の栽培家です。長年にわたって主にバルク販売で生計を立てていましたが、1998年にドメーヌを継承した15代目マチュー・メルレが本格的に自社ビン詰めを開始しました。2018年より厳格なリュット・レゾネ栽培を開始し、2020年に「HVE（Haute Valeur Environnementale、高い環境価値）」の最高段階「レベル3」の認証を取得しています。
　「私たちの畑は地中海沿岸部に特有の低木地帯に拓かれていますが、起伏、土手、茂み、植生等々、ほとんど手つかずの野生のままの姿で残っています。また敷地内をトング川の清流が横断しています。近年でこそ持続可能なあり方で高品質なぶどうを育成するための生物多様性の重要性が唱えられるようになりましたが、数百年前に畑を開墾した先祖たちの知見と隻眼に深く感謝するばかりです。おかげで私たち子孫は、大自然の生命がいきいきと宿っているような素晴らしいぶどうを毎年収穫できる幸せに恵まれています」。
　「ぶどう本来のジューシーな美味しさをそのまま楽しんでいただけるように、濃過ぎない、ピュアで繊細な味わいのワイン造りを目指しています。そのため人為的な介入や現代的技術の導入は極力避けながら清潔かつ原理的に醸造していますが、唯一圧搾工程に関しては、最新鋭の高性能プレス機を2台併用し、非常に長い時間をかけて果汁をやさしく、やさしく、ゆっくりと抽出することを心がけています」。
　ご紹介するシリーズ「La Guerre des Bouchons（コルク戦争）」は、1962年に公開され大ヒットしたフランス映画「La Guerre des boutons（「ボタン戦争」。映画の邦題は「わんぱく戦争」）」へのオマージュです。「子どもの頃、困った時、悩んだ時、泣いた時、この映画を見ていつも勇気づけられてきた私の宝物です。オマージュとして捧げることで、今の私にできることで世界の誰かが笑顔になってくれればいいなという願いを込めました」（マチュー・メルレ）。