北部ローヌのトップドメーヌのひとつとして知られる「アラン・グライヨ」が2014年にボージョレに設立した「ドメーヌ・ド・ファ」の栽培長であったシルヴァン・マルテルは、2018年、ジュリエナ西部で売りに出されていた標高450メートルの斜面畑に「一目惚れして」購入し、自身のドメーヌを設立しました。
　「グライヨ家の下で長年実践してきたビオディナミを最初から導入しました。本当に美味しいワインを造るためには、ビオディナミによって土壌を活性化させることは絶対条件だと考えています。私が取得したリウ・ディ「ベセ」は野生の木々に囲まれており、もともとごく自然に生物多様性が確保されています。当時で樹齢45年のヴィエイユ・ヴィーニュであったことも購入の決め手になりました。ゴブレ仕立てによるヘクタールあたり1万本の密植を行ない、収量を25ヘクトリットルまで制限することで、土中のあらゆる成分がぎっしりと詰まった理想的な完熟ぶどうを収穫しています」。
　「醸造においては介入を文字通り最小限に抑えています。除梗は行わず、小型の木製垂直型プレス機で非常にゆっくりと圧搾した後、25ヘクトリットルのフードルで発酵とシュール・リー熟成を行ないます。ビン詰め前の澱引き時にのみ極少量のSO2を添加して、無清澄・ノンフィルターでビン詰めします」。
　ファーストヴィンテージは2019年。極めてみずみずしくシルキーな口当たりの後、繊細でジューシーな果実味がじんわりと体に染み込んでくるような彼の作品は、まさしく「新しいボージョレ」と呼ぶに値する傑作であり、リリース直後から各国のバイヤーやソムリエたちから大声援を送られています。