マルサネ・ラ・コート村とフィサン村に挟まれたクシェ村に1970年に創業したドメーヌで、マルサネ、フィサン、ジュヴレ・シャンベルタンなどに合計9.2ヘクタールの畑を所有しています。2004年にドメーヌを継承した3代目ドニ・フルニエは、同年より実質ビオロジックの厳格なリュット・レゾネ栽培を開始し、マルサネ～フィサンにおける自然派生産者の先駆けとなりました。
　「もともとは自然環境への影響や、畑で栽培に従事する私たちの健康を考えて始めたのですが、やがて土の色が変わり、葉の色が変わり、ぶどうの品質が変わりました。祖父と父が遺してくれたぶどう樹は、根を地中深くまで張り巡らせたヴィエイユ・ヴィーニュとなりました」。
　「シンプル・イズ・ベスト」が信条。醸造においても余計な足し算や引き算は行わず、ぶどう本来の美味しさや滋味を過不足なく表現することを旨としています。
　彼の作品は、大自然の恵みや慈しみが心と体に染みわたってくるような優しい味わいで、その余韻はマエストロが奏でるピアニッシモのように、いつまでも心に残ります。「ワインのスタイルは造り手の心の写し鏡」と言われますが、ドニは一度会えば誰もが友達になりたいと思うような本当に「いいやつ」で、彼の心根の優しさや思いやりの心は、そのままワインに投影されていると思います。
　そしてそのピュアでナチュナルな在り様は、彼のワインの中に各AOCのテロワールの個性が顕在化していることを表します。
　「マルサネはマルサネ、フィサンはフィサン、ジュヴレはジュヴレです。お料理や人生のシーンに合わせて楽しみ分けられることが、ブルゴーニュの文化であり、醍醐味だと思います」。