続いて、前回のブログでも触れたミッシェル・ベタンヌとティエリー・ドゥソーヴのコンビが、「ラ・ルヴュ・デュ・ヴァン・ド・フランス」 誌より独立して刊行を開始した、 「Le Grand Guide des Vins de France」 。
内容は、以前の 「クラスマン」 とだいたい同じような感じですが、「クラスマン」が、生産者を星なし、★、★★、★★★の4段階で評価していたことに対して、こちらは、各地域ごとに生産者を5段階で評価し、また、1ページにつき2社紹介されている5段階評価ページの後に、 「その他の成功生産者」 として1ページにつき6~8社、掲載しています。
5段階評価されている生産者は、このコンビが「クラスマン」時代の昔から高く評価している生産者が選ばれています。
評価5の「DRC」や「ルロワ」など有名生産者も多いですし、そこまで有名ではない中堅生産者も多数含まれています。
パーカーや前回のブログの 「Les meilleurs vins de France」 のような、生産者の知名度と評価の高さが概ね比例関係にあるようなガイドと比べると、「えっこの生産者がこんなに高い評価?」 あるいは 「こんなに低い評価?」 と感じるような評価が多々あります。
ベタンヌとドゥソーヴはヨーロッパのトップワインジャーナリストであるため、有名ドメーヌが低く評価されていることに昔から議論もあります。
しかしだからこそ、私は、このコンビの見識の高さや、崇高なジャーナリズム精神を強く感じます。
ベタンヌについては、 「試飲会で、ベタンヌにワインを注いでいた生産者が彼の服にワインをちょっとこぼしてしまい、激怒して会場を出て行き二度と戻って来なかった」 とか、あることないこと批判的なヨタ話も多いのですが、百歩譲ってそのような話が本当だったとしても、だからどうだというのでしょうか。
プロの世界では、その人の人格と、「仕事としての作品」には何の関係もないのは常識ですし、というよりもむしろ、人格も含めた彼の”真実”は、「仕事としての作品」の方のみに表れるものだと思います。
彼のガイドを読むと、そのことがよく分かります。
(ちなみに、私は、ボルドーでベタンヌに会って一緒に試飲をしながら話をしたことがあります。彼の仕事に対する姿勢は真剣そのもので、テースティング能力は恐るべきレベルでした。そして、会話はユーモアとエスプリに溢れた、とても知的で楽しいものでした。)
ベタンヌとドゥソーヴの仕事の極意は、「生産者の知名度や高い価格などに惑わされることなく、自分達の舌できちんと試飲し、感じたとおりに評価する」点にあります。
まさしく、「当たり前のことを当たり前に」行っていると思います。
そしてもうひとつ、この2人は、新しい世代の生産者にも熱い眼差しを向け、自ら積極的に評価し、紹介する努力を昔から続けています。
いわば有名生産者達からもチヤホヤされる立場にある、彼らのようなトップジャーナリストとしては、異例の態度といえるでしょう。
今回のガイドでは、 「その他の成功生産者」 で紹介されている生産者が、概ねそれに当たります。
このコーナーでは、誕生して間もないが早くも良いワインを造りはじめている生産者や、昔から美味しいワインを造り続けているが知名度は低い、「いぶし銀」的な造り手が紹介されています。
ごく一部の例外を除き、このコーナーのほとんどの生産者の造るワインは、価格以上の品質を誇る、コストパフォーマンスに秀でたものです。
あるいはこのコーナーこそが、このガイドの本当の白眉と言っていいかもしれません。
<2009年度版掲載生産者>
(アルザス)
Marcel Deiss 評価4
(シャンパーニュ) 大手メゾンに不当に偏ることなく、RMもしっかりと網羅した濃い内容
Françoise Bedel 評価2
Paul Déthune 評価2
Lilbert-Fils 評価3
(ブルゴーニュ)
Les Temps Perdus 評価1
Lucie et Auguste Lignier 評価2
Pierre Amiot その他の成功生産者
Digioia-Royer その他の成功生産者 (2009年1月復活取り扱い予定)
Nathalie Vigot その他の成功生産者
Jean-Pierre Bony その他の成功生産者
Jean-Louis Chavy その他の成功生産者
Yvon et Chantal Contat-Grangé その他の成功生産者